はじめに
急性期や回復期に入院している脳血管疾患・骨折の患者さんはどんどん機能が回復し、ADLも向上していく。一方で慢性期にあっても機能やADLが向上する患者さんもいる。どちらも機能やADLが向上している点では変わりが無い。しかし、両者には大きな違いがある。
この大きな違いを混同しているセラピストも少なくは無いのでは無いでしょうか?この機会に違いを整理し、明日からのリハビリテーションに活かしていきましょう!
急性期・回復期の回復とは
脳血管疾患では、出血の吸収、炎症の軽減、ペナンブラの再活性化により、脳実質の回復が得られる。当然、脳の実質が回復するので身体機能や高次脳機能が回復してADLも向上してくる。
骨折後では、手術侵襲の回復や骨癒合の影響で筋力や運動能力が変わってくる。筋力や運動能力が回復するとADLも向上してくる。
慢性期の回復とは
損傷した脳や骨折部の回復はプラトーになり、ほとんど回復は認められない。しかし、運動負荷や運動の難易度が適切な場合は筋肥大や筋力向上、運動の学習が起こり課題とする動作や運動の習熟度が向上する。
これは健常者が運動を学習し、獲得する過程と同じで、プラトーとなる事は無い。しかし、負荷量や難易度が正しく無いと効果が無かったり、逆に習熟度が下がる恐れもある。
よく起こる勘違い
急性期・回復期で起こる勘違い
脳や骨折の回復による影響で機能やADLが改善しているにもかかわらず、セラピストが治したと勘違いする方がいる。この場合は脳や骨折の回復により勝手に治ったのである。
セラピストは脳の回復や骨折の回復に応じた難易度や方法での運動やADLの動作方法を提案する事に集中しなければならない。
維持期で起こる勘違い
もうプラトーなんで、動作の改善は難しいと考えるセラピストがいる。しかし、維持期であっても適切な強度の運動であれば筋肥大や筋力アップは起こり、正しい運動の反復は運動の学習を起こす。
ただやみくもに運動をするのではなく、戦略的に運動を提案する必要がある。また、適切な強度や運動の反復は一定のつらさやしんどさを伴うため、患者さんが理解し自ら取り組める声かけや支えが必要となる。
まとめ
脳血管疾患、骨折など病気そのものの回復はある時期でプラトーに達する。しかし、運動学習や運動能力・機能の向上はその後も続く。おそらく明確な境目は無い。
セラピストは病気そのものが良くなって機能が向上したのか?トレーニングにより機能や能力が向上したのかは意識しておく必要がある。