セラピストに役立つ情報

FIM ~概念とセラピストの視点~

FIMの概念

【FIMとは】

機能的自立度評価(Functional Independence Measure)
1983年にアメリカのGrangerらによって脳卒中の予後を医療施設で調査するために開発されたADL(日常生活活動)の評価法のひとつである。
BI(バーセルインデックス)と共に日本で普及している評価法である。
BIはできるADLの評価として介護の分野で広く使用されている。
FIMはしているADLの評価として医療の分野で広く使用されている。

【何を表しているのか】

生活の中でどの程度の介助が必要なのかを数値化したもの

【評価項目】

評価項目は運動項目13項目と認知項目5項目から構成されており、合計で18項目を評価する。

運動項目

1 セルフケア
1.1 食事
1.2 整容
1.3 清拭(入浴)
1.4 更衣(上半身)
1.5 更衣(下半身)
1.6 トイレ動作
2 移乗
2.1 ベッド・椅子・車椅子
2.2 トイレ
2.3 浴槽・シャワー
3 移動
3.1 歩行・車椅子
3.2 階段

4 排泄コントロール
4.1 排尿管理
4.2 排便管理

認知項目

1 コミュニケーション
1.1 理解
1.2 表出
2 社会的認知
2.1 社会的交流
2.2 問題解決
2.3 記憶

【採点基準】

運動項目

7点:自立
6点:修正自立(用具の使用、安全性の配慮、時間がかかる)
5点:監視・準備
4点:75%以上、100%未満している
3点:50%以上、75%未満している
2点:25%以上、50%未満している
1点:25%未満しかしていない

認知項目

7点:自立
6点:修正自立(用具の使用、安全性の配慮、時間がかかる)
5点:90%以上している
4点:75%以上、90%未満している
3点:50%以上、75%未満している
2点:25%以上、50%未満している
1点:25%未満しかしていない

FIMが必要な理由

回復期リハビリテーション病棟では他職種によるチームアプローチが重要とされており、ADLの改善と在宅復帰は共通の目標となる。ADLに関してはカンファレンスのみならず普段から情報の交換が密に行われている。情報交換の際には共通言語が必要であり、FIMが共通言語として使用されている。
FIMを使用することで患者のADLの状況や治療の効果、目標とするADLまで共通認識することができる。

【施設基準上の必要性】

① 回復期リハビリテーション病棟
基準1には実績指数37点以上が必要で、3と5においては30点以上が必要となる。
※実績指数:(退院時-入院時)×(算定上限日数÷入院日数)
 実績指数を上げるためにはADLの改善と早期退院が必要となる。
② 廃用症候群リハビリテーション料
安静によりFIMが115点以下に低下した場合にリハビリテーションを実施することができる。
③ 6単位以上のリハを行う場合
回復期リハビリテーション病棟や脳血管疾患の急性期では9単位を上限として6単位以上のリハビリテーションの提供が認められている。6単位以上のリハビリテーションを提供する場合は実績指数が27点以上であることが条件付けられている。
※リハビリテーション医療にとってFIMでADLを評価することは切っても切り離せないものとなっている。

セラピストはFIMデータをどのように考えるのか?

【目標】

どの項目においても修正自立以上の6点を目標に介入していく。理由として、例えば5点であれば監視を必要とするため、介助者にかかる時間の拘束は介助する場合と変わらない。修正自立以上であれば時間の拘束が発生しないので介助者が1人で外出できる可能性が高まり、生活上の不自由さが随分軽減される。このため、目標として6点を目指すことが多い。

【重要と考えている項目】

介助者が外出や目を離す時間を確保できるかどうかは、トイレの自立が大きく関与しており、トイレが介助の状態ではおむつを使用しない限り介助者が患者から離れることが難しい。おむつの使用は患者と介助者の自尊心に影響を与えるため、トイレの自立望む家族が多い。
ポータブルトイレが自立するためには移乗とトイレ動作が自立していることが必要となる。トイレを使用する場合にはこれに加え、移動が必要となる。この際の移動は歩行である必要はない。

【治療展開】

① 最大限の能力を発揮した場合に出来るFIM項目(出来るADL)を増やす。
② 病棟でも繰り返し練習(セラピスト・看護師による)を行い、最大限までの能力を発揮しなくても出来るようになってきた段階で、病棟ADLへ反映させることを、看護師・医師と検討する。
この段階では最も必要なのは他職種協働である。
③ 最終的に自宅場面を想定し、自宅を想定した環境での練習を行い、実際に自宅で動作が出来るかの確認を行う。

【問題点の抽出】

FIMの項目で自立となっていない項目に対して機能的な問題なのか?認知面の問題で手順が理解できないのか?動作学習が不十分であるのか?など問題点の抽出を行う。
機能的な問題に対しては機能訓練を行い、認知面の問題であれば繰り返し説明と練習を行い、病棟スタッフにも繰り返し説明をしてもらうように協力を依頼する。動作の学習が不十分なのであれば、病棟生活も含め統一した動作方法で繰り返し動作の練習を行う。

【最後に】

回復期リハビリテーション病棟では他職種による協働が必要であり、協働するためには共通言語が必要である。
FIMに対する理解を深めていきましょう。