セラピストに役立つ情報

認知症ケア「ユマニチュード」を習得したら100%リハビリテーションの技術がワンランク上がる!!

認知症ケアの「ユマニチュード」をリハビリテーションやケアに応用する。

セラピストの悩み

認知症を持つ方にリハビリテーションやケアを行おうとしても、患者さんがかたくなに拒否を繰り返し、時には暴言や暴力を用いて拒否を行う。このため、リハビリテーションが一向に進まない。もうどうしたらいいのか分からない。

こんな経験をしたセラピストも多いのではないでしょうか。
私自身も患者さんの拒否やモチベーション低下に悩んだ時期がありました。そんな時、テレビでユマニチュードを目にし衝撃が走りました。

それまではリハビリテーションをしないといけないのにどうやって説得してリハビリテーションをやって貰おうかを考えていました。しかし、リハビリテーションをやってもらう事が一番出会ってはいけなかったのです。

リハビリテーションとは人と人との関わりなので、たとえ認知症を有していても丁寧に接する事を一番に考えなければいけなかったのです。むしろ認知症を有する方に対しては、認知症が無い方以上に丁寧な対応が必要なのです。

ユマニチュードの概要

ユマニチュードはフランスのイヴ・ジネスト氏とロゼット・マレスコッティ氏により開発され、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づく認知症ケアの技法である。

また、ユマニチュードの哲学は、認知症の方が相手でも、『あなたは人間』『そこに存在している』と伝えることである。そしてユマニチュードは英語で「humanitude」と書き、その意味は「人間性」なのである。つまり人間性を尊重するための技術といっても良い。

日本では国立病院機構東京医療センターの本田美和子医師が学び、その技術を広めるために全国の講演会に登壇している。最近では雑誌やテレビでも取り上げられることが多く、目にする機会は確実に増えてきている。研修の企画などはジネスト・マレスコッティ研究所で行われている様である。

書籍ユマニチュード入門ユマニチュードという革命ユマニチュード 認知症ケア最前線
DVD「ユマニチュード 優しさを伝えるケア技術 」



ユマニチュードを学び実践する前に

認知症を有する方に対する介入方法は技術である事を知っておかなければいけない。認知症患者さんに対する思いが強くてもセラピストが認知症を有する方に対してい気持ちがあっても対応方法の知識と技術が無ければ、拒否や暴力・暴言に繋がってしまう。

ここでユマニチュードに関する知識と技術を学んでもらい、認知症を持つ患者さんの笑顔を取り戻してもらいましょう。リハビリテーションをやればやるほど笑顔になる!あなたにも必ず出来ます!難しい一方、知識と技術があれば、患者さんはもちろんセラピストもいらぬストレスを抱える必要がなくなるのである。

セラピストが学ぶべき知識と技術であると言える。

ユマニチュードの基本的な考え方

認知症を有する方に対して「言うことを聞いていない。」ことへのストレスを強く感じていると報告されているが、本当に「言うことを聞いていない。」のだろうか?「聞いていない。」のではなく「何を言われているのか理解していない。」もしくは「理解できていない。」のではないのでしょうか?

セラピストは伝えているつもりになっていないですか?ほんとうは伝わっていないのかもしれませんよ。
あなたの「〇〇さんリハビリに行きますよ。」は伝わっているでしょうか?
「ユマニチュード」はセラピストの意図や意思を伝える技術なのです。

ユマニチュードは誰もが学ぶことができる技術である。

ユマニチュードは魔法のようなケアと言われることがあるようであるが、決して魔法などではない。誰でも身に付けることができる。1年目のセラピストでも10年目のセラピストでも学ぶことができるのである。また、一度覚えた技術は何度も応用して使うことができる。

テレビで紹介されていたものでは、入浴するのに怯え、暴れ、噛み付く認知症を有する方に対する介入でした。その方に対し、看護師さんは優しく声をかけ、入浴に導くが、やはり患者さんは暴れてしまう。

そんな認知症を有する方にジネスト氏はゆっくりと近づいていく。そう、ゆっくりと目線を合わせまるで目線で「初めまして、私はあなたの味方ですよ。」と訴えるように・・・そして、目の前まで顔を近づけ「今日は天気が良いですよ。廊下の窓からは富士山が見えました。せっかくだから見に行きませんか?」と話しかけたのです。すると、その認知症を有する方はゆっくりと動き出し歩き出すのです。

この時、患者さんはもとより看護師さんまで笑顔に包まれていました。特に患者さんの表情には怯えや不安がなくなんとも言えない優しい表情となっていました。
私はこの衝撃的な映像を見た瞬間に“これだこの技術を習得したい”と感じました。
ほんの数分の映像にはユマニチュードの技術がぎっしりと詰まっていたのです。

認知症を有する方の特徴

認知症の方は視野が狭く、物を捉えにくくなっています。また、視力自体が衰えている場合も多くあなたがリハビリをしにやって来たことに気づいていない可能性があります。また、一度言ってもすぐに忘れてしまったり、理解に時間がかかる。理解自体が難しいことがあります。さらに触感覚も低下していることがある。

ユマニチュードはこれら認知症を有する方の特徴を十分に考慮した介入の技術なのである。

ユマニチュードは「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つが基本

「見る」

①患者さんのお部屋に訪れ、ノックをして「失礼します。リハビリの△です。」と言いながら必ず視界に入り、患者さんからの目線をまず掴みましょう。この時に注意することは、少し遠目から視界に入ることである。
もし、横から急に顔を出すと患者さんはびっくりしてしまいます。
想像して見てください。あなたも音楽を聴きながら歩いていて、急にバイクが自分の目の前を ビュン と通り過ぎるとびっくりしてひっくり返ってしまうでしょう。
患者さんからすると急に出て来たあなたの顔は、急に出て来たバイクと同じように感じびっくりしてしまうのです。
②患者さんの目線より少し下から目を見ましょう。
あなたが上から見られるとどんな気持ちになりますか?威圧感を感じるのではないでしょうか?
逆に少し低い位置から見られたらどうでしょうか?なんか親しみを感じるのではないでしょうか?また、車椅子に座っている時などは、少し下からの方が目線を捉えやすく、患者さんも自然にあなたの目線を捉えられます。
これは効果抜群ですのでかなりオススメできます。
③なるべく顔を近づけ、正面から見ましょう。
視力が低下していると顔がはっきりと分からず、誰が近づいて話しかけているのかが分かりません。また、視野が狭くなっていて正面からでないと見えていない可能性があります。想像して見てください。誰かわからない人が近くで声をかけて来たらちょっと怖いですよね。そういう怖さを抱えながらであれば話を聞くどころではないですよね。

「話す」

①目線を捉えたら2秒以内に話し始めましょう。
「こんにちは、今日もいい天気ですね」と言うと普通は「こんにちは、本当に気持ちのいい天気ね」と帰ってくる。これは共有できる話題を題材として話すことで、同じ時と場所を共有していることを確認し、親近感を高める行為である。これはビジネスマナーにおいて頻繁に使われている手法です。
逆に目があって2秒以上の沈黙は警戒感や不信感を持たせてします。初対面の人にジーと見られたらどうでしょうか?考えて見てください。
普通なら少し警戒してしまうのではないでしょうか?私なら「なにこの人??」「何か悪いことしたかなぁ??」などと思ってしまいます。
認知症を有する方に対して、目線を捉えることができたら「私はここにいます。」「危害を加えませんよ。」とメッセージを送ってあげないといけないのです。
②返事がなくても語りかける。または状況を説明し続ける。
声をかけたのに返事がない場合もありますが、全く気にする必要はありません。聞こえてはいるが返事ができない方もたくさんいらっしゃるのです。まずは返事がなくても気にしないことです。そして、返事があるものとして会話を続けます。
たとえば「こんにちは、○○です。」「今日もいい天気ですね。」「こんな日は少し散歩に行きたいですね。」「どうですか?少し散歩に出かけて表の花を見に行きましょう。」「では車椅子のブレーキを外して、進みますね。」「少し自分で漕いで見ましょうか?」「しっかり手が動いていて、いいですねぇ。」「その調子であの曲がり角まで行きましょう。」
こんな風にセラピストが一方的に話しかけてもいいのです。ただし、一言一言の言葉がけに対し、間を開けることが重要なポイントです。決してマシンガントークではないのです。
③新たな動きを行う時には動く前に次の動きをまず説明しましょう。
思いもよらない動きは患者さんをビックリさせてしまいます。次にどのように動くのか説明し理解を得た上で次の動きに移りましょう。

「触れる」

セラピストであればホムンクルスと言えば、すぐに思い浮かびますよね!!
そうなんです。そのホムンクルスの感覚領域をうまく使うのです。
先程から言っているように急な刺激はビックリさせてしまいます。ではどのようにしたらいいのでしょうか?
答えは、
①まず背中など狭い領域の部分を触れていき、徐々に手や足を触れていきます。
決して急に手に触れたり、顔に触れてはいけません。
背中→肩→上腕→前腕→手 の順番で触れていきます。
接触面積を増やすと感覚情報が多くなり、自己と相手を確認することができて安心につながります。
急に手首を掴間れると患者さんをビックリさせてしまうので注意しましょう。
手や足を持ち上げる時は下から支えるようにして持ち、危険な場面以外は握ることを極力避けましょう。

「立つ」

「立つ」はセラピストであれば、お手のものですよね!!
「立つ」によって2足歩行を獲得した人間が人間であることを証明する象徴のようなものです。
「立つ」ことによって視野の高さが変わり、足底に荷重刺激が入る。また、脳幹網様体の活動を促進させる。リハビリテーション場面はもちろんのこと、病棟でもなるべく「立つ」場面を増やしていくことが大切で、人間としての尊厳を守ることにもなるのです。

まとめ

ユマニチュードの考え方は認知症の方のみならず、どの方に対しても通用するものであり、人間性の尊厳という最も大切にしなければいけない基本中の基本である。
ユマニチュードの技術を取得するとまず患者さんの表情が変わります。次にリハビリテーションの効果が変わります。
あなたのリハビリテーション技術をもうワンランク上げるために・・・